那覇市集団指導から学ぶ、障害福祉サービス事業所の最新動向と取り組みポイント
那覇市で開催された障害福祉サービス事業所向けの集団指導に参加し、請求業務から防災対策まで幅広いテーマが取り上げられました。本コラムでは、その主要ポイントをわかりやすくまとめました。事業所の皆さまが日常業務や今後の運営において役立てていただければ幸いです。
1.はじめに
那覇障害者プランの基本理念である「障害のある人もない人も共に輝く社会の実現」を目指すうえで、行政と事業所の連携が欠かせません。今回の集団指導では、請求等の実務的な話から障害者虐待防止・差別解消法への対応、さらには薬剤管理や防災・業務継続計画(BCP)の重要性まで、多面的な情報が提供されました。
2.請求業務のポイント(支援審査グループ)
2-1.請求審査の流れ
- 1日~10日頃: 事業所が国保連へ請求データを送信
- 仮審査・二次審査: 国保連の仮審査後、エラーを那覇市が追加審査 → 必要に応じて事業所へ確認や返礼連絡
2-2.代表的なエラーと対処
- 有効な受給者支給決定情報がない
受給者証番号や契約情報を見直し、更新が未完了なら利用者や那覇市に確認 - 支給量超過
実際は超過していない場合は返礼不要。必要に応じて契約支給量を見直し - 契約期間不一致
受給者証の有効期間と請求システムの契約期間をできるだけ合わせる
2-3.児童通所支援・地域生活支援事業での注意
- 利用日重複エラー:放課後等デイサービスの日程重複に注意
- 請求コードの誤り:所得区分や決定内容に合ったコードの選択
- 時間外サービスの扱い:原則不可、やむを得ない場合は事前・事後に連絡
2-4.円滑な請求対応に向けて
- 4~5月はエラー・問い合わせが集中 → 担当者間で情報を共有し迅速な対応を
- 今後、申請進捗状況をネットで確認できるシステム導入を検討中
3.障害者虐待の現状と差別解消法(相談支援グループ)
3-1.虐待防止法の概要
- 3つの虐待形態: 養護者、障害福祉施設従事者、使用者
- 身体的虐待が最多:那覇市でも通報・判断件数が年々増加傾向
3-2.通報事例と再発防止
- 通報者: 警察・医療機関・本人・施設職員など
- 再発防止策: 不適切行為に至った背景の検証、施設内の協力体制整備が重要
3-3.障害者差別解消法
- 2024年4月から合理的配慮提供が事業者も義務化
- 不当な差別的取扱いを防ぐため、社内研修や相談窓口の整備が必要
4.薬剤管理の基礎知識(那覇地区薬剤師会)
4-1.薬の正しい使用とリスク
- 自然治癒力をサポートするものだが、用法用量を誤ると健康被害の恐れ
- 高血圧治療薬・抗うつ薬・睡眠薬など、副作用や依存リスクに注意
4-2.転倒リスクを高める薬
- 睡眠薬・抗不安薬・利尿薬など → 眠気や脱水により転倒・めまいが生じやすい
4-3.誤薬防止と記録
- 誤薬は重大事故につながる → ダブルチェック体制・服用記録 が必須
- お薬手帳やかかりつけ薬剤師 との連携で情報を一元管理
5.業務継続計画(BCP)と防災対応(沖縄気象台)
5-1.沖縄特有の気象災害
- 台風接近数が多い、勢力の強いまま停滞すると大きな被害
- 線状降水帯や集中豪雨 による土砂災害・浸水のリスクも要注意
5-2.警戒レベルに応じた避難行動
- 警戒レベル3: 高齢者等避難
- 警戒レベル4: 避難指示(この段階で避難完了が望ましい)
- 警戒レベル5: 災害が切迫し、命の危険がある状態
5-3.BCP策定のポイント
- ハザードマップを活用し、行動計画を時系列で整備
- 台風・大雨・津波・地震など多面的な想定が必要
- 定期的に訓練や見直しを行い、従業者全体で共有する
6.実地指導の指摘事項(事業所指定グループ)
- 虐待防止委員会の設置・研修が未整備:令和4年4月以降は義務化・未実施で減算
- 身体拘束廃止に向けた取り組み不足:委員会・指針整備・研修を実施
- BCPの作成・研修未実施:感染症・自然災害対策を含め法令上義務化され減算対象
- サービス提供記録が不十分:利用日・支援内容・記録者名を正確に記入・保管
- 従業者研修の不足:年間計画と実施記録を残す
7.その他事務連絡
- 那覇市からのメール受信設定:重要情報の周知漏れ防止
- ホームページの定期確認:集団指導や重要なお知らせを随時掲載
- WAM.NET(事業所情報)更新手続き:毎年5月に実施
- 消防法令適合通知書の提出:更新指定時も「直近3か月以内」の書類が必要
まとめと今後のアクション
- 請求業務の正確さ
- 受給者証との整合性チェックを徹底し、エラーを減らす
- 仮審査結果の対応や問い合わせには迅速に対応
- 虐待防止・差別解消への意識強化
- 委員会設置や研修実施を義務として捉え、実際の運用体制を整える
- 2024年施行の合理的配慮義務化に向け、早期準備
- 薬剤管理の徹底
- 多種多様な薬の特性・副作用をスタッフ全員で共有
- 誤薬防止体制と利用者の健康管理を最優先に
- 防災と業務継続計画(BCP)の整備
- 台風や大雨など沖縄特有の災害リスクを踏まえた具体策を
- 定期訓練とマニュアルのアップデートで実効性を高める
事業所の運営には、利用者の皆さまの安全・安心を第一に考えた対応が求められます。請求業務や各種法令対応の精度を高めながら、緊急時のリスクに備えることで、地域の信頼を得られる運営体制を築いていきましょう。