認知症でも楽しく買い物、スローショッピング【鳥取県】

高齢になるとお財布からの小銭の出し入れ等で時間が掛かることが多く、後ろの買い物客へ気を遣う高齢者も多いですので歓迎すべき取り組みです。

認知症でも楽しく買い物 スローショッピング

山陰中央新報 2024年8月26日(月)

鳥取県が倉吉市内のコンビニエンスストアで試行したスローショッピング(鳥取県提供)

 認知症になっても暮らしやすいまちづくりを目指そうと、鳥取県が分かりやすい店内表示や自分のペースで買い物を楽しめる「スローショッピング」の実証実験に乗り出す。希望する店舗に必要経費や専門家の派遣を支援。2024年度中に実証実験を踏まえた導入手引をまとめ、県内のスーパーやコンビニエンスストアなどへの波及を図る。

 認知症の人は認知機能の低下により、会計で財布から現金を取り出すのに時間がかかったり、買いたい商品の場所を探すのが難しかったりするほか、道に迷ったりするなどのケースも多い。県は民間と連携した支援策を模索する中、岩手県で始まり、各地に広がるスローショッピングを知り、実証実験の実施を決めた。

 県長寿社会課によると、実証実験は、ゆっくり落ち着いて会計をする「スローレジ」と分かる張り紙の掲示▽介護施設職員や店員による付き添いと買い物支援▽店員による聞き取りやすい速さの口調での接客▽店内BGMの音量を下げ、店員の声が聞こえやすくする−などに取り組む。客が少ない時間帯に限った実施も可能で、店側も売り上げの増加の効果が期待できるという。

 7月8日には倉吉市内のコンビニで試行。高齢者施設の利用者5人が施設職員や店員に付き添ってもらいながら思い思いに買い物を楽しんだ。利用者からは「久しぶりに外で買い物できてよかった」「付き添った人がどこに何があるか教えてくれて助かった」との声が寄せられたという。

 希望する店舗の募集は24年度末まで受け付ける。実証実験に取り組む店舗に対し、絵や簡単な言葉で意思疎通を図る「コミュニケーションボード」の導入、スロープの設置といった経費を上限30万円支援。事業者向けの研修会や認知症当事者の対応に関する専門家の派遣なども行い、導入を手助けする。今月22日時点で3社と導入に向けた協議を進めている。関連経費約460万円を24年度一般会計当初予算で確保した。

 県は、県内に認知症や軽度認知症の人は計4万8千人程度いると推計し、今後も増える見通し。県長寿社会課の沢田和明課長は「認知症になっても楽しく幸せに暮らせる手助けになってほしい」と話した。

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