統合失調症と生命予後、Mortality Gap について
統合失調症と生命予後 ~Mortality Gapと身体合併症の課題~ :琉大学病院 座間味 優、沖縄県医師会報 Vol.61 No.3 2025 P21-25
統合失調症と生命予後のまとめ
統合失調症とは?
統合失調症は人口の約0.8%(日本国内では約80万人)が罹患している精神疾患です。主な症状には、幻覚、妄想、思考の乱れなどがあります。
統合失調症の生命予後(Mortality Gap)とは?
- 統合失調症の患者さんは一般人口に比べて平均余命が約14.5年短いとされています(Mortality Gap)。
- デンマークの研究では、統合失調症患者の平均死亡年齢は62.4歳で、一般人口の73.4歳より約11年短いとの報告があります。
主な死因
統合失調症の患者は、一般人口よりも死亡率が3.3倍高く、その主な原因は以下の通りです。
- 心血管疾患(虚血性心疾患など)
- 肺がん
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
特に心血管疾患の予防のためにはメタボリックシンドローム(MetS)の予防・管理が重要です。
身体合併症が多い理由
① 薬物療法の影響
- 非定型抗精神病薬(オランザピンなど)の副作用により、肥満や糖尿病、脂質代謝異常を起こしやすくなります。
② 生活習慣の問題
- 食事内容の偏り(不健康な食事)、運動不足、高い喫煙率などが挙げられます。
- 特に喫煙は肺がんや慢性閉塞性肺疾患(COPD)のリスクを高めます。
- 統合失調症患者の喫煙率は、男性で約52.9%、女性で約24.4%と一般人口(男性40.1%、女性11.8%)よりも高いことが報告されています。
③ 医療アクセスや診療態度の問題
- 認知機能低下や陰性症状により、自ら受診を避ける場合があります。
- 身体科医の精神科患者への偏見や、症状の過小評価による診療の遅れがあります。
- 精神科医側の身体疾患への関心の薄さも課題です。
医療者の役割
① 精神科医
- 定期的な健康チェック(体重、血液検査、心電図など)を行い、異常があれば早期に身体科医に紹介する。
- 生活習慣の改善指導を行う(特に禁煙や健康的な食生活、運動を推奨)。
② 身体科医
- 統合失調症患者への偏見を避け、一般患者と同様に丁寧な診察を行う。
- 患者がうまく症状を表現できないことを理解し、検査や画像診断など積極的に評価する姿勢を持つ。
まとめ
統合失調症患者の生命予後を改善するためには、精神科と身体科の密接な連携が不可欠です。生活習慣改善、MetS予防、薬剤の適正使用、偏見のない医療提供がMortality Gapを縮めるために重要となります。
イルミナーレでも看護師、医師を中心として、かかりつけ医療機関と連携を強化し将来的には統合失調症患者さんの生命予後の改善に向けて取り組んでいきます。